編者の関岡氏は、近年米国の経済侵略を白日の下に晒した。この関岡氏は、遠くない日本の未来で歴史を省みた時、もしかしたら蜀の王累、張任の如き大忠臣と 称えられるか、あるいは日本を破滅に追い込んだ張本人と罵られるかもしれない。現時点の評価は難しい。ただ、本来、親米反米という教条はおかしい。日本人 である以上、全ては日本の未来のための立場しかありえず、親米のための親米は反日以外の何物でもない。故に、本書のように米国に都合の悪い本を見ただけで アレルギーが出る人は、今一度日本人であることを自覚して欲しい。
本書で目を張るのは、佐藤優氏の親米保守の自己矛盾のくだりである。冷戦が終 わり、もはや親米論は通用しないという。しかし、親日家である以上、反米の選択肢は無い。21世紀の日本は日英米豪印を主軸とした連合で生き残る以外ない し、現に安倍総理は秀逸なる岡崎久彦氏のアドバイスを受けてか、その方針を豪印との間で事実上明らかにしている。
日米で世界経済の45%以上、 軍事費は世界最高。ここに印が入れば、いかに中露が横暴しようと変数に過ぎない。そして、歓迎すべき核武装を施した民主主義の巨人で世界一の親日国インド が共産中国の後背を突く。東南アジアのシーレーンは日豪米で対抗する。豪も、全高校の20%で日本語を教え、第一外国語が日本語という筋金入りの親日国で ある。そして、英印豪ともに米国を主軸としている以上、やはり盟主は米国以外ない。
つまり、21世紀でも親米は12分に通用する。しかし、本書 に出てくる副島氏などが指摘するとおり米国の対日経済侵略は無視できない。その最たる物は今年の三角合併解禁である。これこそ、カモフラージュされていた が、日米投資イニシアチブの郵政以上の狙いであった。これにより、今年5月から日本企業は次々に外資の下に落ちることになろう。まずは世界でここしかつく れないという貴重な技術を持つ企業が落ちる。
そして、我が日本とともに歩んで来た重鎮、日立製作所などは極めて危ない。アナリストは指摘しない が、新日鉄よりよほど危ない。日立はPBRも割安、関連企業は山のように、売上高も10兆近い。経営改善で業績回復の潜在力を持つ。外国人持ち株率も高 く、筆頭株主は
ナッツクムコ(米国預託証券)。時価総額2兆など現金ではなかなか用意できない。しかし、三角合併解禁で現金など用意せず、株をするだけで 買収できてしまう。経営陣の同意が必要だから大丈夫というバカもいるが、同意なくして出来る事など山ほどある。5割握れば全取締役は思いのまま。防衛策と して取締役任期1年ズラシがあるが、ほぼ意味は無い。要するに、株式交換の前になすすべはない。だから、例えば韓国などは圧力があってもこれは解禁してい ない。
まだ、規則の強化でこの買収劇は防げる。やられてからでは取り返しがつかない。経団連のいうとおり、政府は直ちに規則の強化に努めるべきである。いずれ解禁するにせよ、まだ早すぎる。
万一、メガバンクが米投資銀行などに買収されても別に日本の金を勝手に出来るわけではないから致命的ではない。しかし、製造業は日本の魂である。技術はどんどん流出する。経済が弱くなった日本は自給率不足や燃料不足が一気に表に出て、大変なことになる。
親米派に言うべきは、弱い日本は見捨てられるということである。日本は経済金融で用無しになれば親も反もなく米国は見捨てるだろう。しかし、日本が強い内 は、米国は絶対に日本が必要である。米国を金で支えているのは日本(モーゲージ証券、国債、イラク・・)なのだ。その意味で、本書は日本に住まうつもりの ある人なら親米反米もなく読んで損はない。